アルカリ加水分解のニセ映像出回る

ロイターさんが報告したのですが、ニセ映像が口コミでどんどん広がってヤバいことになっていました。
実際、そういうのはSNSで拡散しやすいのが問題です。

そもそも、米国ではご遺体をコンポストとして活用して良いという州がいくつかあります。
こっちのほうが・・・物議を醸しそうなんだけど(笑)

アルカリ加水分解遺体処理も現在、米国でもNY、CA、OR、WA、CO、VT、NV、現在28州があります。
カナダも同様に認可されてきています。
Aqua Cremation(Aquamation, water cremationやflameless cremation, Resomation® )は150度で高気圧で沸点温度を上げて、水の中に5%の強アルカリ性液体を入れて「処理」いたします。
人間の体重、性別、そしてエンバーミング具合いを吟味して調整しているところが多いようです。

https://www.cremationassociation.org/page/alkalinehydrolysis

そんな中、やはりデマの映像が流れるのは世の常。

YEY Business 20230331 アルカリ加水分解 偽映像出回る

まず、どんなことがインチキなのか・・

ロイター通信によりますと

https://www.reuters.com/article/factcheck-dead-fed-living-idUSL1N3621X5

一つは食品に再利用されているらしいと・・・
そもそも溶けたらDNAもRNAもすべて消えている(サンポールに漬けたのと同じ効果)。
この残った肉片を肥料にしていたり、食品加工業作が買い取っているとか

ロイターが調査した結果:

この映像はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の医学部でやっている映像です。
実際、150度〜160度の水温で4時間くらいかかるとのことです。
ここで、仕上がった「遺骨」←遺骨と不純物(ペースメーカーやその後、体内に埋め込まれたもの)のみしか残りません。米国ではペースメーカーの取り扱いは州によって、外す必要があったりします。
日本では、私が2010年のBLS AHAガイドラインにて救急蘇生資格を取得したときには、調べたら日本ではもう抜かなくてもよいという判断がくだされていました。(でも実際つい最近までは抜いている事案があったみたいですが、コロナ禍でほぼ処置をしなくなったとも噂では聞いてます)。

残った「遺骨」は自然乾燥させることで、余分なエネルギーを利用して二酸化炭素排出量を増やしたくないので4〜5日かかるとのことです。乾燥したら、細かい「不純物」を取り除いて、粉砕機に入れて遺骨を砕いて遺族へ渡しているとのことです。

発端となったのがこの映像を利用したInstagramerが映像を加工し、この「残り」を飲食に回しているのか?って投稿で6900以上もの「いいね!」がついたことでした。
しかも、このマシンを「ご遺体洗濯機」と揶揄したところからも始まっている。

無知無能な人たちがこれを拡散して、デマが広まったことです。

しかも、これがまた加工され、TikTokへ転送され、Facebook Shortでも流され11,900以上の「いいね!」がつき、17,000回も再シェアされている。

この件に関してはUSA TODAYも独自調査をして、ニセ情報だと断定しています


そもそも、この液体には「肉片」は残りません。
物理的な筋肉(アミノ酸)は強アルカリ性液体で溶けてなくなります。
残った液体はかなり消毒済み(アルカリ分解してDNAもRNAも吹っ飛んでいます)で、廃液タンクへ流れます。
実際、この液体は糖分、アミノ酸、ペプチド(2つ以上のアミノ酸が結合したもの)です。

CANAより
https://www.cremationassociation.org/resource/resmgr/infographics/AHprocess-graphic-logo.png

科学者によると、この液体はトイレや風呂の排水よりずっときれいであるとのことです。
しかし、飲みたくはないことは確かです。
米国では、この液体をそのまま流していることらしいです。
実際、この液体は下水で再処理されることにはなります。

EPA(米国環境保護庁)として、このアルカリ加水分解されて出てきた液体が直接飲料水に活用されているという事実は把握していないとのことです。


国際宇宙ステーションで、一昨日飲んだ水は、今日の飲水だというレベルの内容に近いかも知れませんが、米国では「再処理水」以外は、下水で無毒化した後、海や川へ流すことをしています。
水資源が乏しいシンガポールは確か「飲める下水」として再利用(NEWater)として活用されています。

日本の下水処理システムも同様に、飲料水としては利用していません。

ちなみに、このアルカリ加水分解処理されて残った遺骨が、骨粉として再利用されているということもないです。
残された遺骨=「リン酸カルシウム」が動物のエサになっているというのも確認されていません。

でもやろうとするヤツはいるだろう・・・

実際、このアルカリ加水分解処理の歴史をたどると1888年にアメリカのウィスコンシン州の農家で英国人であるAmos Herbert Hanson氏が自分のところで死んだ家畜を効率よく再利用するために編み出した処理法として特許を取得している。特許番号が No. 394,982 である。

https://patents.google.com/patent/US394982A/en

この処理にて、遺体(家畜の残骸)の処理を加速させることが判明した。

そして100年後の1990年に二人の科学者がこの技術を活用し、動物に蓄積された放射性同位元素を安全に発見するために活用しはじめたのがきっかけと言われている。

この処理を使うことで、遺体の腐敗そのものの危険性、有害な化学定着液、シアン化合物、生物性毒素、そして病原体を除去することができると判明したからだ。

これが、更に発展し、今のアルカリ加水分解遺体処理が開発されていて、数社が新しいマシンを開発している。


結論からして、時間がかかるが「火葬」よりもエコであるのは確かだが、今の日本は棺も燃やす葬送文化で、このAqua Cremation方式を利用する場合、ご遺体を真っ裸にしないといけないので(服とか脱がさないと効率よく処理できず時間が数倍かかる)、通常でも4時間〜6時間の処理時間が必要なのに、18時間もかかって(40度弱の温度だったらその数倍)の時間がかかるので、果たしてトータル(人が火葬場へ行き来する必要があったり、交通システムや待ち時間を考慮すると)でエコとは言えないだろうと。

動物を無用に剥製にするよりマシではあるかもね。

銀河鉄道999で鉄郎くんのお母さんが機械伯爵によって剥製にされていたのを思い出した・・・