【葬祭ジャーナル】終末期での葛藤の映画、”A Monster Calls”

映画「A Monster Calls」(怪物はささやく)

2016年10月に公開された映画「A Monster Calls」(邦題「怪物はささやく」)は、公開から約9年が経過した作品です。
主演女優シガニー・ウィーバーが祖母役で出演しており、一見すると子ども向けファンタジー映画のように見えますが、そのテーマは「死」と「グリーフ」であり、大人を含む幅広い層に響く内容となっています。

Aliensで主演女優のシガニー・ウィーバーさんが祖母役で出演しています。

実際これは子ども向けの映画だったのか?

視点を変えねばならない。
「死」というのはハッキリいうと「子ども向け」の内容ではない。
描写がファンタジーだが、人間が持つ死に対する恐怖、悲しみ、怒り、現実逃避などの様々な感情をこの映画で描かれている。

そういう意味では、子ども向けではなく、死と直面せねばならない大人含めての映画である。

誰しも誰かの子どもである

このことをわすれてはならない。
自分の親も、おじいちゃん、おばあちゃんの子である。
誰かの子どもであり、そして全員、死を見てきたことを忘れてはならない。


映画のあらすじ:

主人公のコナー少年は、母親が不治の病に侵され、人生の崖っぷちに立たされているという悪夢に繰り返し苛まれます。
両親の離婚、厳格な祖母との葛藤、学校でのいじめなど、様々な困難に直面し、孤独を感じるコナーの前に「モンスター」が現れます。このモンスターはコナーに3つの物語を伝え、彼が真実を受け入れ、成長する手助けをします。

そこでシガニー・ウィーバー演じる母方の祖母はコナーと母親を支えていますが、祖母の厳しすぎるしつけのため、怒りが湧き、葛藤します。その中で彼は頻繁にいじめを受けることに。
いじめ、両親の離婚の複雑さ、そして愛する母親の病気のせいで、彼は行き詰まり、自分が見えない存在だと感じているところ「モンスター」が現れます。

悲しみはモンスターを通して力強いテーマであり、動機となっています。
コナーが不在の父親や厳格な祖母といった権威に対する感情の爆発に葛藤する中で、この悲しみを描いています。
また、悲しみがしばしばもたらす怒りによって、コナーは破壊的、時には暴力的な傾向に陥ることも。
これは人が愛する人の終末期を迎えるときに起きる現象でもあり、亡くなってから突然くるものではないという話です。

その中で3つの物語を伝え、最後に真実に開眼させます。

  • 悲しみと怒り: 父親の不在や祖母への感情の爆発を通して、悲しみが引き起こす怒りや破壊的な行動が描かれています。これは、人が愛する人の終末期に直面する際の自然な感情の現れとされています。
  • 人生の矛盾: モンスターが語る物語の教訓は、善悪が明確でない人生の矛盾に慣れ、対応することの重要性を示唆しています。
  • 真実の受容: 物語を通して、コナーは最終的に真実に開眼し、自身の感情と向き合う勇気を得ます。

死とグリーフから学べる教訓

  • 多用な感情の需要:
    いろいろな感情が同時に湧くのは普通。 愛情、怒り、怖さ、そして時にはホッとしてしまう気持ちも、全部「人間らしさ」です。自分を責めなくて大丈夫。
  • 本音を語ることの重要性:
    本音を言うと、痛みは少し軽くなる。 「本当の物語」を語ることが、受け入れの始まりです。黙るより、言葉にすることが大事。
  • グリーフに正解はない:
    グリーフには正解・不正解はない。 怪物の物語にヒーローも悪役もいないのは、「感じ方に点数はつけないで」というメッセージ。感じたことを認めるところから回復が始まります。あきらかに認めることしかできない
  • 象徴や儀式による支え:
    象徴や儀式は支えになる。 怪物=イチイの木の存在は、治癒や長寿の象徴。物語や絵、写真、お別れの儀式など“形”は、揺れる心を支える杖になります。
  • 予期悲嘆の理解:
    「亡くなる前の悲しみ(予期悲嘆)」もグリーフの一部。 待つ時間、家族の張りつめた空気、学校での孤独も。そのつらさをどう受け止めるかを、この映画は丁寧に描いています。

「悲しみの中でいちばん勇気がいるのは、本当の気持ちを認めて言葉にすることです。物語はその手助けをしてくれる」というメッセージが、少年と怪物の出会いを通して深く示してくれます。

「イチイ」の木の象徴

映画に登場する「イチイの木」は、多岐にわたる象徴的な意味を持っています。

  • 肯定的側面: 「一位」に通じることから学業成就、商売繁盛、そして長寿や不死を象徴します。
  • 否定的側面: ヨーロッパでは「死」や「悲哀」の象徴とされ、葉や種に含まれる毒性から「毒(Toxin)」の語源にもなっています。また、その硬くしなやかな材は弓の材料としても使われてきました。

最後にこのモンスターが残す教訓:

 “You were merely wishing for an end of pain. Your own pain. Hers. That is the most human wish of all.”

人類は痛みから逃れたい、自分、他人、すべてです。
別れによる悲しみはあります。
別れを知る前に不安を感じた時点で人間は痛みを感じます。
知ったときでそれが痛みが始まります。


葬祭ディレクターへの示唆

葬儀社はビジネスである一方で、遺族はそれぞれ故人への複雑な感情を抱いています。

  • 死の個別性: 子ども、親、親戚、友人、まだ生まれない子、ペットなど、それぞれの死に伴うグリーフ(悲哀)は大きく異なり、すべての死が特別であることを理解する必要があります。
  • 共感とビジネスのバランス: 同情(Sympathy)は適切ですが、共感(Empathy)として行動を伴にするのは避けるべきです。しかし、思いやり(Compassion)は示しつつも、自身の役割が葬儀社の葬祭ディレクターであるというビジネス上の立場を忘れてはならない。

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