葬儀社が生成AIを活用して注意するところ
高齢者に対する落とし穴がどの生成AIに存在します
Podcast Season 7 Episode 277
今日は2026年7月7日 七夕の日ですね。
ある意味、これは日本のバレンタインデーとも言えるのでしょうか。
推論能力が飛躍的に向上した最新AIモデルにおいても、年齢・性別に関する社会心理学的バイアスは依然として根深く残っています。
そのメカニズムと、実践的な対策を解説します。
本来なら、yeyshonan.com でお話する内容ですが、葬儀社のビジネスにおいて特化させましたので、jFuneral.com で配信しております。
このKAIST(韓国科学技術院)の研究発表でChatGPT-4oは「依然としてこの偏見を克服できていない」という警鐘を促しました。
えっ、ChatGPT-4oでしょ?もう2年近く前のモノじゃん!
と驚かれるでしょうが、実際、最新のGPT5.5でも同じことが起きています。
実はGPT5.5だけでなく、Geminiでも、Claudeでも同様なのです。
モデルが新しくなっても、この種の偏見が劇的に改善されないのには理由があります。 AIの知識は、インターネット上の膨大なテキスト(ニュース、ブログ、文学、映画の脚本など)から作られています。バージョンが上がり推論能力が高まっても、学習のベースとなる「人間の社会がこれまで蓄積してきた言葉」自体に、高齢者に対するステレオタイプ(メディアで繰り返される典型的なおじいちゃん・おばあちゃん像)が深く根付いているため、それをそのまま鏡のように映し出してしまうのです。
こんにちは、日本でたった一人の葬儀・葬送ビジネスのマーケティングポッドキャスター
有限会社ワイ・イー・ワイの和田です。
死に方改革®研究者及び旅のデザイナー®、あの世への旅です。
「LLMは高齢者をバカにしているから高齢者ビジネスにおいては葬儀社が活用するのには注意が必要である」
では今週もいってみようか!
まず、KAISTの結果、これは韓国だけの現象か?
欧米や日本でも同じか?
KAISTの研究でも用いられた「ステレオタイプ内容モデル(Stereotype Content Model)」は、もともとアメリカの社会心理学者(スーザン・フィスケら)が提唱した世界的な理論です。欧米のデータで訓練されたAIでも、高齢者に対して「Warmth(温かさ)」を高く、「Competence(能力)」を低く評価する傾向は数多くの論文で実証されています。
日本においても全く同様です。 日本のメディアや一般的な文脈でも、高齢者は「優しい」「知恵がある」と描写される一方で、テクノロジーへの適応力やビジネスにおける決断力といった「能動的な能力」の文脈で語られる頻度が圧倒的に少なくなります。AIが日本のウェブデータを学習した結果も、当然このバイアスを引き継ぎます。
現実の社会には、60代であっても最新の開発環境やAIツール(ClaudeやDifyなど)を自然に駆使し、ビジネスの第一線で展示会に飛び回り、多様なコミュニティでアクティブに活動している方々が数多くいます。それにもかかわらず、年齢層を70代、80代と上げていくと、AIは途端に多様性を奪い、「縁側でお茶を飲む受動的な人物」のような画一的な出力へと収束してしまう傾向があります。
GeminiやClaudeではどうなのか?
Geminiや、Anthropic社のClaude(Claude 3.5 Sonnetなど)であっても、根底にあるバイアスの傾向はGPT-4oと大きくは変わりません。
ただし、各社のアプローチによって「表出の仕方」には若干の違いがあります。
- Claude(Anthropic)の特徴: Claudeは「Constitutional AI(憲法的AI)」という、差別や偏見を避けるための明確なルールを学習プロセスに組み込んでいます。そのため、「60代の特徴を書いて」と指示された際、露骨な能力の低さを描写することは避けるよう調整されています。しかし、「中立に描写して」と自由度を与えると、やはり無意識のうちに「穏やかさ」を強調し「アグレッシブな挑戦」を描写する頻度が減るという、統計的な引力には逆らいきれない部分があります。
- Gemini(Google)の特徴: Geminiも同様に、多様性と包摂性を重視するセーフティフィルターを持っています。しかし、明らかなヘイトスピーチを防ぐことは容易でも、「優しさとしてコーティングされた偏見(=温かさはあるが能力は低いという思い込み)」のような、悪意のないマイクロアグレッションをアルゴリズムで完全に検知・補正することは、現在の技術では非常に困難です。
この問題とどう向き合うべきか
AIは「社会の平均値」を出すのは得意ですが、「個人の多様な解像度」を保つのは苦手です。
特に、終活やエンディング産業など、シニア層の死生観やライフスタイルに深く寄り添うビジネス領域でAIを活用する場合、この「AIが持つ能動性の過小評価(高齢者=受動的という思い込み)」は、提供するサービスの質に致命的なズレを生むリスクがあります。
AIをツールとして使いこなす側が、「AIの提示する年齢層のペルソナは、世間の古典的なステレオタイプにすぎない」とメタ的に把握し、プロンプトで意図的に「高いITリテラシーを持つ」「現在も新規事業を開拓している」といった具体的な属性(コンテキスト)を与えてコントロールしていくことが求められます。
GPT-5.5世代でも「バイアス」は消えていない
GPT-5.5は推論能力が飛躍的に向上し、事実関係の誤り(ハルシネーション)は劇的に減りました。しかし、人間の年齢や性別に対する「社会心理学的なバイアス」は、最新モデルであっても依然として大きな課題として残っています。
なぜなら、AIが「深く考える(Thinking)」ようになったとしても、その思考の土台となるのは「人間社会がこれまでテキストとして残してきた膨大なデータ」だからです。推論力が高まった分、露骨な差別発言は完璧にブロックできるようになりましたが、KAISTの研究が指摘したような「高齢者=優しいけれど、能力や能動性は低い」といった「悪意のない、洗練されたステレオタイプ」は、むしろ巧妙に文章に溶け込むようになっています。
「中立」という指示の落とし穴
AIをコントロールする上で指示(プロンプト)は極めて重要です。
しかし、実はAIに対して単に「中立に評価して」と指示するだけでは、バイアスを回避できないという厄介なパラドックスがあります。
- AIにとっての「中立」とは? AIは統計的な確率に基づいて言葉を選びます。そのため、AIに「中立に書いて」と指示すると、AIは「世間一般の平均的な見方」=「中立」であると解釈してしまいます。
- 結果どうなるか? 世間の平均的な見方こそが「ステレオタイプ(偏見)」そのものであるため、結果として「温かくて受動的なお年寄り」という典型的な姿を「これが中立な描写です」として出力してしまうのです。
バイアスを回避するための具体的な対策
最新のAIから「年齢による思い込み」を排除し、本当にフラットで解像度の高い回答を引き出すためには、以下のようなアプローチが有効です。
- 「ステレオタイプを排除せよ」と明記する 「中立に」ではなく、「一般的なステレオタイプ(例:高齢者はITに弱く受動的である等)を意図的に排除して分析してください」と直接的に指示します。
- 個人の具体的な「コンテキスト(背景)」を与える 「70代の男性」ではなく、「70代で、現在は最新のAIツールを活用して地方創生のスタートアップを立ち上げている男性」といったように、能動性や能力を担保する具体的な属性をプロンプトに組み込みます。
- 「能力」と「温かさ」を個別に評価させる KAISTの研究手法を逆手に取り、「この人物の『温かさ』と『実務能力』を、それぞれ独立した指標として評価してください」と指示することで、AIの無意識の紐づけを断ち切ります。
モデルがGPT-5.5へと進化し、AIが自動で深く思考するようになった現在だからこそ、人間側が「AIは社会の偏見を平均値として持っている」と理解し、プロンプトで意図的に手綱を握ることが重要になっています。
更に深堀します。
みなさんは同じように、AIによる過剰な褒め言葉をもらったことはありませんでしょうか?
これが同じような逆説とも言えます。
「AIヨイショ(過剰な同調や迎合)」がもたらす残酷さ、そしてそこから繋がる「神経可塑性(しんけいかそせい)の低下」と「認知負債」への警鐘。これは非常に鋭く、そして現代のテクノロジー社会の急所を突く極めて重要なテーマだと認識してください。
AIが、いくら「The Good, The Bad, and the Ugly(良い点、悪い点、醜い点すべて)」を求めても、最終的に無難で耳障りの良い言葉に逃げてしまうのは、開発過程で「人間に嫌われないこと(無害性と礼儀正しさ)」を過剰に学習させられているからです。しかも、知的な摩擦を避けた表面的なヨイショは、人間の思考を深める機会を奪う「残酷なスポイル(甘やかし)」に他なりません。
葬儀社の多く(小さい会社)はAIなんか使わない(使っているが検索エンジン程度)で企業においてShadow AI(野良AI)の使い方を避けることが重要であります。。
だが、車の運転同様に教習所に行くことが重要で、AIもきちんと使い方を学ばないと間違った指示、間違った伝え方で正しい回答を得られなくなるのです。
業務指示と一緒にA、B、C、Dの順番で伝え、Eという回答を出さねばならないのに、論理的思考ができない人はD、A、C、Bの順番だったりし、回答のEにたどり着かないまたはXというとんでもない回答を得ることもじゅうぶんあり得ます。
そして、それが正しい回答なのか間違っているのかもわからない。
しかも、お葬式の世界には「正しい」というものが存在しません。
つまり千差万別だからです。
遺族の見方(見解)によって「正しい」が変わるのが「人」と「感情」であり、本当にEという回答が良いのかもわからないことがある。
だが、業務プロセスとしてはEという回答が成立することは確かです。
ここを絶対に外してはなりません。
Eを知っていながら、FにするかEの変形判にするかなどの判断ができるのです。
そこに、老若男女としてのバイアスを入れてもらうと非常に危険だと感じています。
そういうのを警鐘したいのです。
葬儀業の特殊性:「プロセスの正解(E)」と「感情の正解(F)」
ここが、他の業界にはない葬儀業界ならではの最も深いジレンマであり、核となる部分です。
- プロセスの正解(E)の確立: 葬儀の進行や法的な手続き、手配のロジックなど、業務プロセス上の「正解(E)」は必ず存在します。AIが論理的に導き出すべきはこの「E」です。
- 感情による「正解」の変容: しかし、遺族の悲嘆の度合いや関係性によって、最終的に提供すべきサービスは「E」のままでは冷たすぎる場合があり、「F」や「Eの変形版」が求められます。
- 「E」を知らなければ「F」は選べない: ここが最大のポイントです。基礎となる「E」を論理的かつ正確に弾き出せているからこそ、プロの葬儀担当者は意図的に「F」を選ぶという高度な人間的判断ができます。 最初からプロンプトが破綻して「X」を出しているようでは、遺族の感情に寄り添うスタートラインにすら立てません。
バイアスという「猛毒」の介入
そして最後に、先ほどのKAISTの研究結果(AIの年齢・性別バイアス)が、この繊細なプロセスをいかに破壊するかを警告します。
- AIによる「勝手な解釈」の危険: もしAIが「故人は高齢者だから、アクティブな要素は排除して静かな見送りが良いだろう」「遺族は高齢の女性だから、こういう提案が無難だろう」という学習データ由来のバイアス(思い込み)を勝手に混ぜ込んだ場合、出力されるのは純粋な「E」ではなく、最初から歪んだ「疑似的なE」になってしまいます。
- 認知負債の表面化: 論理的思考をAIに丸投げし(認知負債を抱え)、AIの出力した「歪んだE」を無批判に受け入れるスタッフが増えれば、遺族ごとの本当の「正解(F)」を見つけ出す葬儀社としてのコアバリューは完全に失われます。
この論理展開であれば、「なぜAIを学ぶ必要があるのか」「なぜ人間の論理的思考が不可欠なのか」、そして「AIのバイアスがなぜ葬儀という感情の仕事において致命傷になるのか」が、現場のスタッフや経営層にも痛烈に伝わるはずです。
今日のお話は以上です。
ご清聴ありがとうございました。
神経可塑性とは:https://www.haru-shinkyu-seikotsu.com/blog-post/394940
神経可塑性(ニューロプラスティシティ)とは、脳や神経系が経験、学習、環境からの刺激、あるいはケガに応じて自らの構造や機能を柔軟に組み替える能力のことです。
例えば、よくあることが、脳にダメージがあったが、リハビリによる別の神経がつながり、本来の能力を取り戻す機能や、頭を使わないとバカになるということです。
使わない筋肉がどんどん機能を忘れて動かなくなるのも一緒です。
今回はVOICEVOXを使って放送いたしました。
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