Podcast: 東京都の火葬料金、本当に高いのか?そして秋田の逆襲

Podcast Season 7 Episode 275
2026/06/16

皆さんもご存じな通り、東京都の7割くらいの火葬が1社に独占されている。
これは歴史的背景もあるが、今まで何もしてこなかった東京都に問題があるのは確かである。

しかし、歴史的背景があったが、今までは穏便で東京博善は組合と話し合いで値上げをするのに軟着陸をしてきた。
だが、これが一瞬で終わった。
LAOXの創業者による羅怡文氏により、日本の多死社会を支える東京博善の親会社である廣済堂が目をつけて、劇的なマネービジネスを展開しはじめた。
決して、収益が悪いと言うのではなく、本来なら公共事業である火葬場(他の民間火葬場もあるが、自治体との協定で好き勝手できない)を私物化したという問題がある。

日本人は「火葬」という公共サービスを「当たり前」のインフラとして考えてきて、もちろん役所も同様で明文化していなかった。何気なく「火葬」するという仕組みの社会が戦後できあがっていたの。
もちろん「火葬」は法律で義務付けられているわけではない。
離島や火葬場設備が存在しない自治体や火葬場へ行くに困難な場所などは「土葬」OKということになっている。
別問題としてイスラム教徒の勝手な墓地埋葬も存在しているが、これは些細なことだろうと。
そもそも、日本は江戸時代は土葬文化が盛んであった(余談だが筆者は遺体が長年腐敗すると燐が生じ、地中から滲み出てきて、これが行灯の炎によって引火し「ヒトダマ」になるのだろうという考えている)。

さて、ここで東京都23区内の葬儀の現場で何が起きているか。
葬儀のプロである、世田谷の佐藤葬祭の佐藤信顕社長等が今の葬儀業界の問題を東京都にぶつけている。

その中で、やっと東京都が重たい腰を上げて(そもそも「火葬」というのは自治体が主体の事業である(墓地埋葬法の改正により国から自治体へ権限を委譲)。

私たちが直面しているのは、単なる値上げではありません。
公共インフラが民間資本、それも外資やファンドの論理に飲み込まれ、「私物化」されていくという経済的、社会的な構造変化の歪みなのです。
2026年現在、小池百合子都知事による巨額買収検討という異例の事態にまで発展した、東京の「最期のコスト」を巡る不都合な真実に踏み込んだ話をこのポッドキャストでしておりますので是非、お聞きください。


衝撃の格差:明治天皇の司令から始まった「歪んだ歴史」

現在、東京23区の火葬シェア約7割を握る民間企業「東京博善」の利用料は、約9万円(最安でも8万7,000円)という、全国的に見て異常な高水準に達しています。この数字がいかに突出しているかは、近隣自治体と比較すれば明白です。

  • 東京都立川市・八王子市: 住民は原則無料
  • 神奈川県茅ヶ崎市: 市民は1万円程度

なぜ、東京23区だけがこれほどまでに高額なのか。その背景には、東京特有の「制度の欠陥」とも言える歴史的経緯があります。もともと東京の火葬は明治天皇の司令(命令)から始まったという経緯があり、明治から大正にかけて東京市(当時)が公営化を模索したタイミングがあったものの、結果として民間に委ねられる形が定着してしまいました。

火葬業っていうのは、本来だったら自治体がやるべきであって、これは公益なものです。

公衆衛生の要であり、誰もが避けられない「死のインフラ」が、自治体の手を離れ、営利企業の裁量に委ねられ続けている現状こそが、この衝撃的な地域格差を生んでいます。

「儲けて何が悪い」:弔いの心を買い叩く資本の冷徹

この「公益の私物化」を加速させたのが、ラオックスの中興の祖として知られる羅怡文氏による広済堂ホールディングス(東京博善の親会社)の買収です。かつては麻生グループが「ホワイトナイト」として参入を試みたものの、最終的には資金力に勝るファンド側の軍配が上がりました。

その後の経営変貌は劇的です。徹底した収益性の追求により、同社の純利益は2020年度の17億円から、2024年度には36億円へと倍増しました。投資家にとって「葬儀場」は、もはや弔いの場ではなく、極めて効率的なアセット(投資対象)に過ぎません。

「廣済堂を買ったのは、投資先として安かったから」と言っていました。日本人が大切にしてきた葬儀の慣習はまったく気にしていません。「儲けて何が悪い」というのが本音でしょう。
中国の葬儀事情を観察すると、お墓を取り壊し、そこにマンションを建てることも長年見ている中、「死」には思いれがそれほどないのが中共の考えでしょう。

羅氏の知人が語るこの言葉に、資本の冷徹な視点が凝縮されています。日本人が守ってきた「最期の尊厳」や「弔いの心」は、効率と利益という物規(ものさし)によって測られて、買い叩かれたわけです。


東京博善の価格

廣済堂というよりも「東京博善」だけを東京都が購入するとなったらいくらなのか?

小池都知事の「英断」:1,000億円か、エンタメの200億円か?

事態を重く見た小池百合子都知事は、ついに「東京博善の買収」という極めて重い腰を上げました。
廣済堂HDの時価総額は約1,000億円。23区の特別区長会とも連携し、水面下での接触が始まっているとされています。

ここで問われているのは、公金の使い道に対する哲学です。 現在、東京都は電通や博報堂といった大手広告代理店が関わる「プロジェクションマッピング」事業に約200億〜260億円もの予算を投じています。華やかなエンターテインメントに巨額を投じる一方で、死者の尊厳を守るための1,000億円(誰も1000億で買うとは言っていないが)をどう捻出するのか。都議会でも議論は紛糾しています。都の予算規模(約9.6兆円)からすれば決して不可能ではない数字ですが、多死社会における「死の公共性」をどこまで重視するのか、自治体の覚悟が試されています。

投資物件

そもそも「廣済堂」としては今の金づるを手放すことは今後20年の収益にダメージを受けることになります。
放っておいても収益事業なゆえ、たとえ、東京博善の価値が500億円としても親会社である廣済堂の時価総額が約1000億だからといって、1000億でやすやす売り渡すことはないでしょう。それが投資家目線です。


その反面:

「東京の本は役に立たない」:秋田・加藤氏が突きつけた文化の結界

資本による画一的な効率化が進む東京に対し、地方からは力強い「文化の死守」の動きが見られます。秋田県大仙市の葬儀社「家族葬のメモリー」の加藤正則氏(68)が著したはじめてのお葬式完全ガイド・秋田県版が、第3刷を重ねる異例のヒットを記録しています。

加藤氏が語る「真実」は、東京中心の葬儀マニュアルを根底から覆します。

  • 逆転の順序: 東京では「葬儀→火葬」ですが、秋田では「納棺→火葬→葬儀」という「火葬が先(火葬先行)」の流れが一般的です。
  • 文化の結界: 葬儀はまさに地場産業であり、川を一つ越えれば作法が変わる。

ちなみに、筆者が湘南斎場を経営していたとき、秋田県大館市の成田葬儀社(現社長)がうちで長年修行していました。うちを退職して、少し経ってからお父様が亡くなられて社長に就任されましたて、当時秋田県まで参列に伺いました。

東京で出版された本は、秋田では役に立たない。

この言葉は、大手ブローカーや資本が押し付ける「効率的なパッケージ」への痛烈な批判です。
葬送とは本来、その土地の風習や家族の思いに根ざしたものであり、資本の論理で均一化できるものではないという「文化のプライド」がそこにはあります。


公益の崩壊:消えゆく「区民葬」とネットブローカーの影

東京の現状に話を戻すと、資本の論理がもたらす「公共サービスの崩壊」はさらに深刻な段階へ進んでいます。
東京博善は2025年8月、火葬料を割引する負担軽減制度「区民葬」の取りやめを発表しました。

背景にあるのは、「儲からない仕事はしない」という至極単純な営利の理屈です。ネットブローカーを介した葬儀が一般化する中で、利益率の低い区民葬は企業側からも、ブローカー側からも敬遠される存在となりました。
「火葬だけでは赤字」という主張の裏で、100億円単位の収益を上げながら、最も支援を必要とする層へのサービスを切り捨てる。これが、営利企業が公益を独占することの限界点です。

ある意味、日本郵便が民営化した隔たりと同様です。
民営化したことによって、郵便、貯金、保険事業をわけることになり、効率化を進めるため値上げを度々繰り返していて、更に郵便離れを起こしいる状況(年賀状はビジネスにならないから根底的に値上げを実施する)のに似ている。


あなたの「最期」は誰のものか?

東京23区の火葬料問題。
それは、私たち一人ひとりが人生の幕引きを「誰に、どのような論理で管理させたいか」という根源的な問いを突きつけています。これは東京都23区内に住む人達だけではありません。

かつては公共の役割だった「弔い」が、いまやファンドの投資対象となり、利益最大化の道具へと変貌を遂げようとしています。「資本に買い叩かれる死」でいいのか。それとも、秋田の加藤氏が示すように、地域や家族の手の中に尊厳を取り戻すべきなのか。

プロジェクションマッピングの光に彩られる影で、静かに失われつつある「死の尊厳」。あなたの、そして大切な人の「最期」を決めるのは、冷徹な資本の計算式であってはならないはずです。
私たちは今、この不都合な真実を直視し、弔いのあり方を自らの手に取り戻す議論を始めるべき時に立っています。

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