Podcast Season 7 Episode 286 高齢おひとりさまの身じまい問題 全5回、第1話
こんにちは、有限会社ワイ・イー・ワイ jFuneral主催の和田です。
死に方改革研究者®及び旅のデザイナー®。
今回から5回にわたり、身寄りのない高齢者、いわゆる「高齢おひとりさま」の身じまい問題を取り上げます。
入院するとき、施設に入るとき、そして亡くなったあと。
誰が手続きをし、誰が費用を払い、誰がお骨を納めるのか。
家族がいれば当たり前に回っていたことが、家族がいないと止まります。
その空白を、いま民間の事業者が埋めています。
10月6日の朝日新聞の記事では、高齢者の終身サポート事業者は400社を超え、市場規模は100億〜200億円程度とされていました。このうち「400社超」は、総務省行政評価局が2023年8月に公表した調査で確認された412事業者と一致します。
ただし、これは3年前の調査です。2024年に国のガイドラインができ、需要も伸びている今、実数はさらに増えていると考えるのが自然です。
2026年の記事が2023年の数字をそのまま使っていること自体、この業界の実態を誰も最新の形でつかめていない証拠とも言えます。
一方、100億〜200億円という市場規模について、記事は「日本総合研究所によると」と書いています。
ただ、どのレポートの数字なのかは示されていません。
私が調べた範囲では、まだその元の数字にたどり着けていません。
間違いと決めつけるつもりはありません。ただ、元をたどれない数字は、確かめるまで使わない。
これは私自身への戒めでもあります。
では、本来どれくらいのお金が必要とされているのか。
日本総研の研究員が2025年7月に出したレポートでは、死後事務の潜在的な需要を年間およそ9,850億円と試算しています。
ただし、これは前提を置いた試算です。
特に、死後事務の費用を一人100万円とした部分は、実際に調べた平均額ではなく仮定です。
仮定を変えれば、答えは数千億円単位で動きます。計算の手順は、概要欄の書き起こしにそのまま載せました。
数字を鵜呑みにせず、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
私が伝えたいのは、金額の大きさそのものではありません。
現状の推計との開きが大きいこと、つまり満たされていないニーズがそれだけあるということです。

書き起こし・概要欄掲載用:約9,850億円の計算方法
- 65歳以上の死亡者数(2023年度):1,445,868人
- そのうち公的支援の「はざま」にいる人の割合:68.1%(判断能力に問題がなく、資力が平均的な層)→ 984,636人
- 死後事務関連サービスの費用:1人100万円(仮定。実際の平均額ではない)
- 984,636人 × 100万円 = 約9,850億円(年間)
注意点:68.1%には子どもがいる人も含まれます。子がなく支援を最も得にくい層に絞ると247万人(65歳以上の6.8%)です。元記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解ではないと明記されています。
出典:日本総研「高齢おひとりさまの『支援のはざま』」(2025年7月31日、沢村香苗・辻本まりえ)
同じレポートには、もっと重い数字もあります。
2023年度に自治体が火葬や埋葬をした引き取り手のない遺体は、全国で約4万2千人と試算されています。
亡くなった人のおよそ37人に1人です。
そして、9割の人が「備えたい」と答えながら、実際に頼む相手へ依頼できている人は1割程度にとどまっています。
コーナー:報道の数字をどう読むか
ここで少し寄り道をします。
新聞やネットで数字を見たとき、私が必ず確かめていることが三つあります。
- 出典はどこか。 誰が調べた数字なのか。
官公庁の調査か、企業の推計か、記者の取材か。
書いていなければ、その数字は「参考程度」と受け止めています。 - いつの数字か。 今回の400社という数字は、2023年に公表された調査のものです。
記事は2026年。3年の間に業界は動いています。 - 何を測った数字か。 「市場規模」と一口に言っても、いま実際に動いているお金なのか、本来必要とされているお金なのかで桁が変わります。
もう一つ、気をつけたいのが、細かすぎる数字です。今回調べる中で、終活関連の市場を「234.5億円」と、小数点まで示した記事に出会いました。いかにも正確そうに見えます。
ところが、どこの調査なのかをたどろうとしても、元にたどり着けない。
小数点まである数字ほど、正確に見えるものです。
でも、出典が書いていなければ、精度と信頼性は別物です。
今回の朝日新聞の記事について言えば、大筋は正しいと私は見ています。
規制する官庁も法律もないこと、国のガイドラインに罰則がないこと。
問題の構造はきちんと押さえています。
ただ、数字の元をたどろうとすると、たどり着けない。裏づけが乏しいのです。
記者を責めたいわけではありません。
むしろ、大手紙でさえ裏の取れた最新の数字にたどり着けない。
それほど、この業界の実態は誰にも把握されていないということです。
だからこそ、受け取る側が確かめる力を持つ必要があります。
これは終活の契約書を読むときも同じです。
数字の出どころと、いつの話かを確かめる。
それだけで、だまされる確率は大きく下がります。
412という数字は、届け出の義務がない業種で総務省がつかめた数にすぎません。
実際にはもっと多いでしょう。
数が多いことより問題なのは、総務省自身が報告書で、
この事業を監督する省庁も業界団体もないと指摘していたことです。
では、なぜ民間に任されているのか。
介護保険も公的福祉も、「家族がいる」ことを前提に設計されてきたからです。
身元保証人がいないと入院や入所を断られる。
口座が凍結されれば誰も葬儀代を払えない。
制度の側に穴が空いているのです。
私は元エンジニアなので、よくコンピュータにたとえます。
バグを見つけたらパッチを当てる。
いまの終身サポート事業は、まさにこのパッチです。
穴を塞いではいるが、設計そのものは直っていない。後手の対応です。
Good: 家族がいなくても最期まで支える仕組みが、民間の力で生まれている。
Bad: 監督官庁も業界ルールもないまま、市場だけが先に広がった。
Ugly: そのパッチの中に、預けたお金が消える穴が空いている。
次回は、その穴の正体、「預託金」について掘り下げます。
以上です
朝日新聞10月6日記事:https://www.asahi.com/articles/DA3S16561026.html?iref=mor_articlelink01
総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」結果報告書(2023年8月) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230807000167327.html
日本総研「高齢おひとりさまの『支援のはざま』」(2025年7月31日) https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=111702、
日本総研「頼れる親族がいない高齢者の収入と資産を踏まえた民間事業者による支援の活用可能性の検討」https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=111441
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