Podcast Season 7 Episode 271
2026年5月19日
こんにちは、日本でたった一人の葬儀・葬送ビジネスポッドキャスター
有限会社ワイ・イー・ワイの和田です
死に方改革研究者及び旅のデザイナー。
今日は2026年5月18日です。
今週のポッドキャストはリーダーシップシリーズ第5弾の完結編です。
業界の「公然の秘密」を話します
今回は、きれいごとを書きません。
葬儀業界には、長年にわたって「公然の秘密」として語られてきた慣行があります。業界の内側にいた人間なら、誰もが知っている話です。
火葬場がパンクしています。特に都市部では、火葬の予約が取れるまで数日から一週間以上かかることも珍しくありません。これ自体は、多死社会の構造的な問題であり、葬儀社だけの責任ではありません。
しかし、この「空白の時間」を意図的に利用している会社があります。
打ち合わせに人手が割けないと言って帰る。日程を伸ばす。その間、遺体は安置され続ける。安置費用がかかる。ドライアイスの費用がかかる——そしてドライアイスは今、高騰しています。遺族はその請求を、疑う余裕もなく支払います。なぜなら、喪失の痛みの中にいるからです。
さらに踏み込んだ話をします。
湯灌儀式を何度も繰り返す会社があります。「毎日お風呂に入るでしょう」という言葉で、葬儀の知識を持たない遺族を説得しながら。しかし遺体の状態は、時間とともに変化します。繰り返す意味が、医学的にも倫理的にも成立しない段階でも、請求は続く。
必要のないエンバーミングを勧める。一つで十分なデジタル遺影を五つ売る。しかも高額で。オプションを積み上げ、悲しみの中にいる家族の判断力の低下を、売上に変える。
これが、今の葬儀業界の一部で起きている現実です。
だから看板で表示価格の15万円からという数字が150万円の請求になったりします。
これは「人手不足」の問題ではない
なぜこういうことが起きるのか。
表向きの理由は「人手不足」です。スタッフが足りない、打ち合わせができない、対応が遅れる——これは事実の一部です。しかし本質はそこではありません。
私が長年、他社の現場を見てきて気づいたことがあります。問題の根は、常に同じ場所にありました。
意識のズレと、申し送りの抜けです。
迎えの担当者が遺族から聞いた希望が、式場担当に届いていない。担当が変わるたびに、遺族は同じことを何度も説明させられる。アフターケアの担当者は、式の当日に何があったかを知らないまま自宅を訪問する。見積もりを作った人間と、当日動く人間の認識がズレている。
スタッフには知識が足りない場面もある。しかしそれ以上に深刻なのは、権限がないことです。マニュアルの範囲外の相談を受けても、答えられない。対応できない。上に確認しなければならない。その間に時間が過ぎ、遺族の不安は膨らみ、信頼は削れていく。
こうして分業化されたプロセスの「点と点」が線でつながらず、その隙間にお客様が落ちていく。
これは人手不足の問題ではありません。文脈が組織に存在しない、という経営の問題です。
文脈のない組織では、スタッフは自分の担当範囲しか見えません。なぜなら、「この仕事全体が何のためにあるのか」を誰も教わっていないからです。マニュアルは手順を教えますが、意味は教えません。意味のない手順は、少し状況が変わるだけで機能しなくなります。
大手だからこそ、できないことがある
ここで、逆説を一つ提示します。
規模が大きくなるほど、分業は深まります。受注、迎え、安置、式場、アフターケア——それぞれの担当が細分化され、専門化される。効率は上がります。しかし文脈は薄まります。
大手がドミナント戦略で斎場を増やし、広告費をかけ、比較サイトの上位に表示され続ける——その戦い方に、小さな葬儀社は土俵で勝てません。資本の差は、戦略の差である前に、物理的な差です。
しかし、大手には絶対にできないことがあります。
全員が「なぜこの仕事をするのか」を、自分の言葉で言える組織を作ることです。
五人の会社なら、五人全員が文脈を共有できます。担当が変わっても、申し送りが一枚の紙でも、「うちはこういう葬儀社だ」という軸が全員の中にあれば、遺族への対応は一本の筋で貫かれます。
マニュアルは手順を統一します。しかし文脈は判断を統一します。マニュアルにない場面でも、文脈があるスタッフは「うちの会社なら、この状況でどうするか」を自分で考えられる。権限の話ではなく、判断の軸の話です。
これは小さな組織にしかできないことです。人数が増えるほど、文脈の共有は難しくなる。小さいことは、弱点ではありません。文脈が届く距離に、全員がいるということです。
文脈こそが、最後の差別化である
このシリーズを振り返ります。
267で、リーダーシップの本質を定義しました。フォロワーの有無に関係なく、当事者意識と率先行動がリーダーシップである、と。
268で、シルバーシート経営という構造的欠陥を診断しました。茹でガエル状態の経営者が、新しい武器の導入という代謝を拒絶している現実を。
269で、最初の一手を提示しました。「守るものと変えるものを分ける」——カレーはカレーであり続けながら、作り方を変えた。
270で、文脈とマーケティングが同じ作業の表と裏であることを示しました。「なぜこの仕事をするのか」を言葉にした瞬間、それは発信の素材になる。
そして271、完結編です。
文脈のない組織が生む分業の崩壊は、最終的に遺族の不利益として結実します。それを意図的に利用する会社が存在する一方で、誠実に仕事をしながらも、文脈の不在によって知らず知らず遺族を傷つけている会社も存在します。
どちらも、根は同じです。「自分たちが何のためにここにいるのか」が、組織の全員に届いていない。
小さな葬儀社の経営者に、最後にこれだけ伝えます。
あなたには、大手が持てないものがあります。全員に声が届く距離。全員に意味を伝えられる規模。そして、地域の顧客と積み上げてきた、お金では買えない信頼の歴史。
それを言葉にしてください。スタッフに伝えてください。ブログに書いてください。ポッドキャストで語ってください。その積み重ねが、比較サイトには載らない、あなたの会社だけの文脈になります。
文脈は、マニュアルより強い。広告より遠くまで届く。そして、どんな大手も、お金で買うことができない。
「あなたの葬儀社が、なぜその仕事をしているのか。」
その答えを持つ経営者だけが、これからの時代を生き残ります。
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